ウォーターフォード蒸溜所。
2015年にオープンした、アイルランドの南東部に位置する新しい蒸溜所。
アイラ・スコッチのブルックラディ蒸溜所を復活させた「マーク・レイエニー氏」がアイルランドに移り、「テロワール」を取り入れたウイスキーづくりが特徴です。
アイリッシュウイスキーのなかでも、異彩を放つ存在として注目されていますね。
今後に期待したいウイスキーの1つとして紹介したいと思います。
テロワールと契約農家
テロワール(terroir)とは、栽培地・土壌・気候などの特徴をあらわすフランス語になります。
それぞれの土地で育つ作物は、その異なる気候や土壌・水質などから、味わいや品質にも違いが生まれます。
作物に土地固有の性格を与える
これが「土地の個性=テロワール」ということですね。
ウォータフォード蒸溜所では、
アイルランド国内の100ほどの農家と契約し、それぞれの農家で育った大麦を使用しています。
大麦は農家別・品種別に管理され、他の農家の大麦と混ぜることはなく、個別に「糖化」「発酵」「蒸溜」「熟成」を行う “こだわり” ようです。
これをシングル ファーム オリジンと言い、大麦が育った土地(農家)の名称がボトルラベルに記載されています。

大麦が育った土地(農家)の名称 ※個人撮影
「ブルックラディのアイラ・バーレイシリーズ」や「スプリングバンクのローカルバーレイ」など、現地の大麦を使用するウイスキーもあります。
日本でも厚岸蒸留所の「オール厚岸」構想もあります。
しかし、より地域や土地を細分化した「テロワール」にこだわるウォータフォード蒸溜所は、とても珍しい存在と言えるでしょう。
THE TEIREOIR CODE

ボトルと箱の裏面には「THE TEIREOIR CODE」が記載されています。
コードをオフィシャルサイトに入力すると、それぞれのウイスキーの詳細な情報が記されています。

画像出典/オフィシャルサイト
◆SHEESTOWN(シーズタウン)の情報の一部

画像出典/オフィシャルサイトより
大麦の収穫からボトリングまでの全行程が、デイリー単位で細かく記載されています。
他に、農家の位置を示すMAP、その土地の特徴、熟成樽の種類、原酒の構成などの情報もあります。

画像出典/オフィシャルサイト
とても嬉しいサービスですね。
ここまで詳細な情報を公開しているのは珍しいですね。
ホームページのデザインや演出のセンスの良さも感じさせます。
注目するファンも増えるのではないでしょうか。
テイスティング

個人撮影
◆シーズタウン1.2
・香 り/乾いた穀物の香りのあとに、柑橘系のフルーツ、ほのかに蜂蜜の香りが漂う。
・味わい/モルトを感じながら、オレンジピールの甘味のあとに、胡椒のようなスパイスを感じる。
・余 韻/アルコールの刺激とともにスパイスの効いたモルトの風味が長く続く。
モルトのコクと甘い風味のなかに、「アメリカンヴァージンオーク」と「フレンチオーク」由来の程よいスパイスがもたらすバランスの良さを感じる。
◆バリーモーガン1.2
・香 り/クッキーやバニラの甘い香りのあとに、乾いたモルトのようなスパイスを感じる。
・味わい/スパイスの刺激と干し草の風味が先行し、その後にバニラ、ビターチョコの甘味が一気に広がる。
・余 韻/前半に感じるスパイスの刺激は続かず、余韻は短い。
ヴァージンオークとフレンチオーク由来のスパイシーな刺激は共通するが、バリーモーガンのほうが明らかに甘味が強い。
熟成樽の構成にそれほど違いは無く、その土地や農家がもたらす「テロワール」がやはり影響しているのだろうか。
それぞれの土地の特徴に、ヒントがあるかもしれません。
・土地の特徴(シーズタウン)
シーズタウンという土地は主に石灰岩に由来する、起伏のある水はけの良い低地土壌で、歴史的な街キルケニーのすぐ近くにある高品質のテロワールです。
出典/信濃屋ホームページより
父がウォーターフォード蒸留所のスタッフであるフィル・オブライエンによって大麦は育てられています。
石灰岩を含む細かい粘土質の土壌では、粘土質っぽいアーシー、フェインティー、ハーバル、オイリー、ペッパーを感じることができます。
・土地の特徴(バリーモーガン)
バリーモーガンという土地は、アイルランドの中でも大麦の最高品質が採れる土地で、このボトルはロバート・ミルン家が作る大麦によって蒸留されました。
出典/信濃屋ホームページより
バリーモーガンの土地は珪質席を含む粘土質の土壌で、粘板岩と花崗岩により硬いミネラルと呼ばれる要素が味わいに影響しています。
珪質席を含む粘土質の土壌では、モルティ、シリアリー、強い甘味を感じられます。
まとめ
スコッチに「テロワール」を取り入れ、アイリッシュで「テロワール」を深化させる。
とても興味深い、試みですね。
「原材料そのもの」がウイスキーの味わいに与える影響は少ないと指摘する人もいます。
ウォータフォード蒸溜所のチャレンジを通じて、「テロワール」の影響 に注目するのもいかがでしょうか。
最後に、
アイリッシュウイスキーの英語表記は「Whiskey」が主流ですが、ウォーターフォードは「Whisky」です。
「e」がないのです。
スコッチスタイルを踏襲しているからでしょうか!?
こんなところにも “こだわり” を感じますね。
以上でございます。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
ウイスキーの英語表記には、「Whisky」と「Whiskey」の2つがあります。 冒頭の画像は、スコッチの【タリスカー】とアイリッシュウイスキーの【ブッシュミルズ】です。 そう、[e]の有無ですね。 これは「どちらが正解[…]
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