今や世界にその名を轟かせる「イチローズモルト」!
肥土伊知郎氏が手掛ける、国産クラフトウイスキーのパイオニア的存在。
その後に続けと全国各地に誕生した蒸溜所の躍進も、「秩父蒸溜所」の成功の賜物と言えるでしょう。
先日リリースされた、「秩父蒸溜所」と「駒ケ岳蒸溜所」の原酒交換など
その取り組みは国内ウイスキー産業の先頭を走っているとっても過言ではないと思います。
残念ながら、秩父蒸溜所では一般向けの見学ツアーはありませんが、
ご縁があってBAR主催のツアーに参加させていただくことができました。
少しでも「秩父蒸溜所」の魅力をお伝えできれば幸いです。
スタート
BARがチャーターしたバスに乗り込み、東京から秩父へ。
蒸溜所へ到着。
バスから降りると、この景色が目に飛び込みんできます。

蒸溜所スタッフのお出迎えとともに、早速、見学ツアーが始まります。
順番にご紹介します。
①製麦
「風乾」→「選粒」→「浸麦」→「発芽」→「乾燥」→「除根」
これが「麦芽(モルト)」を作り出す製麦の行程です。
ツアーでは「選粒」の詳しい説明がありました。
二条大麦の粒径を3段階に分類させる。
大きさを揃えるこでと、「浸麦」「発芽」を均一化させるためですね。


②糖化
糖化とは、麦芽(モルト)から「麦汁」を作り出す行程。
粉砕した麦芽を温水とともに「マッシュタン」(糖化槽)へ投入。
麦芽に含まれる酵素が、でんぷん質を糖分に変えてくれます。
ここで「麦汁」が完成します。
こんな近くで見学できます。

③発酵
発酵とは、
「麦汁」に含まれる糖類に「酵母(イースト菌)」を加え、
アルコール度数7%〜9%ほどのモロミ(発酵液)を作り出す行程です。
ここで、ポットスチルに投入するモロミ(発酵液)が出来上がります。
見学では、
脚立を登って、このように上から様子を伺えます。

※発酵液を英語で「ウォッシュ」と言う
秩父蒸溜所の特徴は、この「ウォッシュバック」(発酵槽)が「ミズナラ」材で作られているところです。
ミズナラ材は、「伽羅」(キャラ)、「白檀」(ビャクダン)などの香木を思わせる、
独特な香りをもたらせる特徴があります。
線香の香りをイメージされるといいかもしれませんね。
「発酵」はウイスキーの香味成分を左右する重要な行程です。
そのため、
個人的には「ミズナラ」の影響が「イチローズモルト」の個性を作り出していると感じています

④蒸溜
発酵を経たモロミ(発酵液)をポットスチルに投入し加熱します。
蒸溜とは、
水(100度)とアルコール(78度)の沸点の違いにより、先に気化したアルコールを再び冷やすことで、純度の高い液体のアルコールを抽出するものです。

残念ながら、蒸溜はお休みでした。
ですが、間近での見学が可能に!


⑤ミドルカット
ミドルカットの実演があります。
ミドルカットとは、
蒸留により抽出されたアルコールの最適部分を抽出する作業です。
この無職透明なアルコールを「ニューポット」(ニュースピリッツ)と言います。
蒸溜の「前半」に抽出されたもの、「後半」に抽出されたもの、最も好ましいと言われる蒸溜の「中間」に抽出されたものと、その違いについての説明があります。

⑥樽熟成
蒸溜により抽出された「ニューポット」(ニュースピリッツ)に、加水してアルコール度数を緩和させます。
そして、木の樽に詰めて熟成させます。
無職透明な「ニューポット」が、
樽から溶出する成分や外気との接触により熟成が進み、茶褐色のウイスキーへと成長します。
熟成庫の隅々まで見学をさせていただきました。

土の床に輪木を敷き樽を並べ、その上に樽を積み重ねた3段構造の「タンネージ式」。
高低差を少なくすることで温度や湿度の均一化を図り、熟成の度合いを一定に保つ効果があります。

樽のメンテンス倉庫も見学させていただきました。
ここでは、「ミズナラ材」の繊維の特性による樽加工の難しさの説明がありました。
一言に「ミズナラ」と言っても、作り手の苦労を直に感じるものでした。


樽熟成に使用される「バーボン樽」を拝見できるのも、見学の醍醐味ですね。

⑦オフィス
見学を終えて、オフィスへ。
ここでは、ウイスキーアワードに受賞したトロフィーや原酒サンプルなど、展示も兼ねたエリアがあります。



最後に、ここで試飲があります。
「IPA」「ON THE WAY」「リーフシリーズ」にニューポットもありました。
蒸溜所スタッフ皆様と談笑しながら、参加者からの様々な質問に答えていただきました。
残念ながらウイスキーの販売はありませんが、
「テイスティンググラス」や「コースター」などのアイテムの販売がありますよ。

イチローズモルトを味わうときは、見学を思い出しながら使っています。
最後に
ほぼ全てを隈なく、
「ここまで近づいていいものか」というほど、間近に見学をさせていただきました。
夏は30℃以上、冬は氷点下を大きく下回ることもある、
この寒暖の差が熟成にもたらす影響が大きいと、現地で感じることができました。
そして、蒸溜所スタッフ皆様の熱心な説明に本当に感謝します。
特に記憶しているのは、
「生産数を安定させ定番商品を常に店頭に並べてもらうことが大切だ」
というお話がありました。
2018年の見学ですが、
いま、本当に「モルト&グレーン ワールド・ブレンデッド ウイスキー」(通称:ホワイトラベル)が店頭に並ぶようになりました。
イチローズモルトの人気は留まることを知らず、「即完売」「入手困難」の状況ですが、
私はこの「ホワイトラベル」こそ、秩父蒸溜所の真髄が込められていると思います。
量産される定番商品こそ、その品質維持に注ぐ作り手の苦労は何よりも大きいからだと思っています。
加熱するウイスキーブームでも、4000円以下で味わえる素晴らしいウイスキーではないでしょうか。

以上でございます。
最後まで、拝見いただき誠にありがとうございました。
※2018年10月の見学の様子です。
※写真はすべて私個人による撮影です。
・未成年の飲酒は法律で禁止されています。※お酒は20歳を過ぎてから
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